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田内万里夫個展 

SOULSCAPE

by Mario Tauchi

 

 

会期:2025年5月17日(土)-6月1日(日)

開館時間:水木金土日(月火休) 13:00-18:00

オープニングレセプション: 2025年5月17日(土) 16:00-19:00

(17:00~ アーティストトーク ゲスト綾女欣伸/編集者)

 

 エステルオカダアートギャラリーでは、2025 年 5月 17 日(土)から 6 月 1日(日)ま で、田内万里夫による個展「SOULSCAPE」を開催いたします。本展は、独自のスタイルで曼陀羅を描くことで知られる田内の当廊における初の個展です。ストリートアートや東洋思想などの融和により生み出される曼陀羅は、有機的であり、環境に応じて姿形を変え、増殖していく生命体のようにも見えます。それは我々の精神が他者との繋がりにより無限に広がっていく様子の現れかもしれません。本展では、資本主義の暴走や、それと背中合わせの暴力行為に見られる現代の不条理を前に、田内が毎日描き続けたドローイング作品などを含む平面作品の新作を複数点発表いたします。展示期間中には編集者の綾女欣伸をゲストに迎え、アーティストトークも開催する予定です。また、本展は、出版社の求龍堂が運営するオンラインアートスペースでの田内万里夫展と同時開催予定ですので、そちらも是非ご高覧いただけますと幸いです。

 

Artist Statement

 

 生まれ育った家の前は、50メートルほど向こうまで水田が広がっていた。その先は目隠しのような雑木林の急斜面だった。いつからか水田は使われなくなって、いまでは野原のようになっているけど、とにかく、これがぼくにとっての原風景だ。田んぼにも雑木林にも奇妙な生き物がうごめいていたし、どこを見回しても不思議な形をした植物があった。そうして目にしてきた有機的なあれこれが、ぼくにとってあらゆるものの原形だ。

 のどかな外の風景とは対照的に、家の中は緊張感に支配された空間だった。ややこしい問題を抱えた父親がそこにいて、気に入らないことがあれば歳の離れた母親に暴力を振るった。幼かったぼくは、ただ怯えて混乱していた。ドメスティックバイオレンスなんていう言葉はまだなく、あったのは屈折した支配、そして不条理だ。

 十代半ばで家に寄りつかなくなるまで、ぼくにとって絵は逃避であり抵抗であり、また自分を守るための頼りない手段でもあった。

 

 ふたたび絵を描くようになったのは、米国であの9.11の同時多発テロ事件が起きた翌月のことだ。大学を出て4年目で、英語圏の小説などを日本での出版に結び付ける翻訳著作権エージェントの仕事に就いていた。ニューヨークは米国における商業出版の中心地で、世界的な出版文化の一大拠点だ。仕事を通じて知り合った仲間たちの半分はそのニューヨークにいた。衝撃と混乱は凄まじく、あれこれ手につかなくなった。いくつかの個人的な状況も重なって、ぼくの内部でなにかが決壊した。

 仕事用のノートとボールペンから妙な形が次々と現れるようになり、ついに脳が壊れたかと疑った。テロ事件の翌々月にニューヨークに出張し、それからいよいよ絵が止まらなくなった。

 

 絵をいくら描いたところで暴力や不条理が止むわけではないことは少年時代から知っている。しかし、間接的な手段を用いてでも、態度を示すことが必ずしも無意味ではないということもその後の人生で知った。

 

2025年5月 田内万里夫

 

 

田内万里夫 Mario Tauchi
 
1973年生まれ。埼玉県東松山市出身。テンプル大学教養学部英文学科卒業。東京・パリ・メルボルン・フィラデルフィアで暮らしながら、アブストラクトアート、トライバルアート、ストリートアートなどの絵画表現に興味を抱く。2001年、米国の同時多発テロ事件をきっかけに絵を描きはじめ、国内外での活動を開始。「LOVE POP! キース・ヘリング展──アートはみんなのもの」(伊丹市立美術館/2012)の壁画プロジェクトを担当したほか、HACO NYC(2019)、CADAN有楽町(2022)などで個展をおこなう。2021年にニューヨークで立ち上がったアートコレクティブRevolú Galleryの活動に参加。
 
1998年より翻訳著作権のエージェントとして主に英語圏の文芸作品を日本に紹介する。ジョナサン・サフラン・フォア、チャイナ・ミエヴィル、アーザル・ナフィーシー、ジュリー・オオツカ、マーク・Z・ダニエレブスキー、ミッシェル・フェイバー、ニコール・クラウス、ジェイムス・フレイ、アイスバーグ・スリム、ダン・ファンテ、ニール・ストラウス等の日本でのデビュー作を数多く手掛ける。版権エージェントとして勤める傍らで絵を描きはじめ、2015年にフリーランスに転じたのちは芸術活動と平行して翻訳家・編集者・ライターとしても活動。訳書にジム・デロガティス『レスター・バングス──伝説のロック評論家、その言葉と生涯』(TONKACHI/2024)、バリー・シュワルツ『なぜ働くのか』(朝日出版社/2017)、ライターとして汪楠・ほんにかえるプロジェクト『刑務所ごはん』(K&Bパブリッシャーズ/2024)、編集者としてイ・ドウ『天気が良ければ訪ねていきます』(アチーブメント出版/2020年)など。また、2025年5月に初めてのzine『虐殺を止めろ(STOP GENOCIDE)』をリリース。
 
主な個展
2025 SOULSCAPE - Esther Okada Art Gallery(東京)
2022 MARIO - CADAN有楽町(東京)
2019 Mario Mandala - HACO NYC/HACO Brooklyn (ニューヨーク)
2011 Mario Mandala - Tobin Ohashi Gallery (東京)
2010 Mario Mandala - ギャラリーヤマキファインアート (神戸)
2009 田内万里夫展 - グラニフギャラリー c/o レントゲンヴェルケAG (福岡)
2007 Mario Mandala - Trolley Gallery (ロンドン)
2007 Psyche-Ga-Delic - Magic,Room?? (東京)
 
主なグループ展
2024 ODAS MARINAS: The Ocean Unbound - Skipper Lounge (Wind Support NYC)
c/o Revolú Gallery (ニューヨーク)
2022 NEBULAPROTOLOGO - Revolú Gallery (Online/ニューヨーク)
2021 In the meanwhile... - HACO NYC/HACO Brooklyn(ニューヨーク)
2020 JR EAST meets ART @ Takanawa Gateway Fest (東京)
2019 コレクション展 - ギャラリーヤマキファインアート (神戸)
2011 WA - Gensler (サンフランシスコ)
2009 メークリヒカイトII - ラディウム/レントゲンヴェルケAG (東京)
 
​For more about the artist 

 

 

 

 

《原風景/Soulscape》(2025), アクリル、キャンバス

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